今回お邪魔したのは、
・半田信用金庫
・所在地:愛知県半田市御幸町8番地
・創業:1931年5月
・従業員数:236名(2025年取材時点)
街の変化のそばにある、暮らしと事業を支える存在
半田信用金庫は愛知県半田市を拠点に、知多半島、名古屋市・三河地区の一部まで、長きにわたり「地域の暮らしと経済」を支え続けてきた金融機関です。
本店を構えるJR半田駅前では、高架化や区画整理が進み、街は大きな転換期を迎えています(2025年12月現在)。こうした変化の中で、地域に根差す金融機関は、どう街と向き合い、どんな役割を果たしているのでしょうか。
今回は、職員の皆さんの声を通して、そのリアルをたどりました。


商店街の声から始まった、「まち発」の金融機関
「自分たちの銀行をつくりたい」
半田信用金庫の始まりは、地元商店街・御幸通りに暮らしていた当時の人々のこの言葉だったそうです。1931年に信用組合として誕生し、1951年に信用金庫へ改組。2026年5月1日に95周年を迎えます。
「地域の方々に“支えていただいた金融機関”という感覚は、今も強くありますね」
そう語るのは、人事部副部長の遠山 渡さん(1995年入庫)。
日々の業務の中で、この考え方が自然に使われていることが分かります。
信用金庫は、地域の住民や事業者の「困った」に向き合い、ともに考える存在です。
預金・融資・為替といった基本業務は銀行と同じですが、営業できる地域やお客様は限られています。地域の人たち自身が「会員」となり、支え合う仕組みを持っている点が大きな特徴です。
利益第一ではなく、「地域の発展そのもの」が使命である。その姿勢は、日々の取り組みの中にも表れています。

地域イベントに全力参加!これも仕事のひとつ
半田信用金庫では、「地域のために役立つこと」を軸に、さまざまな活動が行われています。
信用金庫の基本として、預かった預金は地域の事業者や住民へ「融資として還元」され、街の中で循環。新しい仕事や暮らしを生み出し、街の元気につなげています。
近年は創業支援や、事業再生支援にも力を入れ、「貸して終わり」ではなく「一緒に育てていく」姿勢を大切にしているそうです。
さらに、「はんだ山車まつり」や「はんだふれあい産業まつり」「半田運河キャナルナイト」といった、地域の祭りやイベントへの参加、半田運河の清掃活動、金融経済教育の出前授業(小・中学生向け)、交通安全啓発や、特殊詐欺防止活動など、金融の枠を超え地域と一緒に汗をかく取り組みも日常の一部。
印象的だったのは、これらが特別な活動ではなく、「当たり前のこと」として語られていた点です。
「地域から声がかかれば、まずは参加する。それが当たり前の文化です」
遠山さんの言葉通り、「街でよく見る顔」であることが、強みのひとつになっています。



向き合うのは、お金よりも人
金融の仕事は事務的イメージを持たれがちですが、話を聞くほどに仕事の中心が「人と向き合うこと」にあると分かります。
得意先係(営業・総合職)は、担当エリアの個人宅・企業を訪問し、暮らしや事業の話に耳を傾け、要望に沿った融資や各種金融サービスを提案します。
新生活の準備、就職、結婚、出産、子育てや退職などの人生の節目に加え、「お店を始めたい」「設備投資をしたい」といった事業の転機に立ち会う場面も多く、ひとつの提案が、お客様の大きな決断につながることもあるそうです。
窓口・後方業務を担うテラー係(窓口係・一般職)は、来店するお客様を迎える「信用金庫の顔」として、正確な事務処理と現金管理によって、店舗全体の安全と信頼を支えています。来店されたお客様との何気ない会話を大切にしながら、その方自身も気づいていない潜在的なニーズを汲み取り、状況に応じたサービスを案内します。
店舗の窓口は、単なる手続きの場ではなく、お客様にとっての相談の場でもあります。
取材中には、窓口で交わされる笑顔のやりとりが印象的でした。“ふらっと立ち寄れるような関係性”が、地域との自然なつながりを育んでいると感じられました。

挑戦しやすい。働きやすい。だから成長できる
新人であっても、大きな金額を扱うからこそ、丁寧な教育と確認体制が徹底されています。
新入社員は入庫後、営業店において約6カ月間、年齢の近い先輩によるマンツーマン指導を受けます。
得意先係の場合、1年目から担当顧客を持ち、融資や資産運用にも関わることで、段階的に知識と業務の幅を広げていきます。
話を聞く中で感じたのは、若手の挑戦を後押ししながらも、決して1人にしない空気感があること。
遠山さん自身も、ノルマが厳しくてつらかった記憶はあまりないそう。ノルマはあるものの、個人に押し付けることはありません。
さらにファイナンシャル・プランナー(FP)など資格取得を支援する制度や、繁忙期を除けば比較的少ない残業、有給休暇の取りやすさなど、無理なく仕事を続けられる環境も整っています。また制度以上に印象に残ったのが、職員同士が自然に声を掛け合う穏やかな空気です。
「みんなで頑張って業績を伸ばしていこう、という雰囲気ですね。仕事内容が原因で辞めたいと考える人はあまりいなくて、結果として長く働く人が多い印象です」と遠山さん。
「チームで成果を目指す文化」や、「職員同士の人柄の良さ」が働きやすい環境を形づくっているように思えました。
立ち止まらずに進める。温かく前向きな風土
「失敗を繰り返して、人は成長しますからね」
遠山さんは新人時代、初めての営業先でお客様に頼まれて現金を数えた際、緊張で手が震えながらも、なんとかやりきったことがあったそう。その出来事が関係を築く一歩となり、「お金を扱う仕事の重み」を強く意識するきっかけにもなったと言います。
別の職員のケースでは、コミュニケーションの行き違いからトラブルが起きたときに、支店長自ら謝罪に向かう姿を見て、「後輩には同じ経験をさせたくない」と、指導の姿勢が変わったという話も聞きました。
「失敗を怖がっていたら、仕事にならないですからね。数字も大事ですが、それだけではない。地域の方と触れ合って、人として信頼していただけることが一番大切です」
本店営業部長の竹内成人さんの言葉からは、
「失敗を責めるのではなく、次につなげながら人を育てていく」そんな風土が、この職場に根付いていることが伝わってきました。

「ありがとう」が近い職場
「金融の知識を活かしながら、地域貢献ができる仕事がしたくて」そう話してくれたのは新入社員の原さんです。
「まだできることは少ないですが、お客様との何気ない会話の中で『ありがとう』と言ってもらえるだけで、この仕事を選んで良かったと思いますね」
職場の雰囲気についてお訊きすると、
「みなさん本当に優しくて、分からないことは何でも聞けます」と笑顔で答えてくれました。
遠山さんもまた、「幅広い年代の人と話すのが好きで、地域貢献に興味がある方にはぜひ知っていただきたい仕事です」と話します。

人とのつながりを力に、未来を支える
「提案を受け入れていただいた瞬間や、長いお付き合いのお客様から『これからもよろしくお願いしますね』と声をかけていただいたときに、大きなやりがいを感じます」
遠山さんのこの言葉から、信用金庫の仕事がいかに信頼関係に支えられているかが伝わってきます。
シビアな面があるからこそ、「この人なら任せられる」と思ってもらえる関係を何年・何十年とかけて育てていく。その積み重ねが、街と金融機関をつないできたのだと感じました。
創立95周年を迎える半田信用金庫では、知多半島の少年サッカーチームの大会開催など、地域との関わりも広がり続けています。街の姿が変わっても、築いてきた関係や使命は変わりません。
金融という「見えないインフラ」を通して、地域の暮らしを同じ目線で支える。取材を通して見えてきたのは、時間をかけて信頼を築いてきた組織ならではの、温かな空気感。
「金融を通して、地域を元気にしたい」
その想いは、1931年から今も、そしてこれからも続いていきます。
