今回お邪魔する事業者さん
・マーメイドデリバリー有限会社
・所在地:愛知県半田市滑楚町13-1
・創業:1989年5月(法人登記)
・従業員:43名
“挑戦する精神”から生まれた社名
愛知県半田市を拠点に地域物流を支える「マーメイドデリバリー有限会社」。
ユニークな社名は、創業者である先代社長の高校時代の原体験に由来します。
ヨット部に所属していた先代が強い影響を受けたのが、海洋冒険家・堀江謙一氏の太平洋横断。その船名が“マーメイド号”でした。「どんな状況でも挑戦する会社でありたい」——そんな想いが社名に込められています。
野口「驚きましたよ。当時は“〇〇運輸”などの漢字名が主流でしたからね。38年経った今ではだいぶ体に染みつきましたが(笑)カタカナ名はグローバル化の走りだったのかもしれません」
そう笑顔で話してくださったのは代表取締役社長・野口朋仁さん。今回は野口さんと採用担当・松岡拓弥さんに、創業の裏側から働く環境、今後のビジョンまでお話を伺いました。

“地域の困りごとを助けたい”小さな運送会社の船出
野口「もともと先代と私は愛知県知多郡武豊町で大手運輸会社に勤めており、先代からは色々と教わりました。時代はバブル真っ只中。消費税導入前の駆け込み需要で物流量が急増し、荷の置き場もないほどでしたよ」
物流の波が激しく変化する中で、先代は独立を決意したそうです。
野口「先代から“手伝ってほしい”と声をかけられ、立ち上げに参加しました。“大手が届かない隙間”を担う取扱業として始まりましたが、業界に馴染むまでは本当に厳しかった。それでも地域の運送業の先輩方に助けられ、なんとか続けてこられました」
同社は後に愛知県半田市に拠点を移し、2021年には新本社兼物流センターが完成。2025年11月時点で、チャーター便(青森~鹿児島)、物流倉庫、配達業務、バックオフィスの4部門で、43名のスタッフが地域物流を支えています。

“道を切り開く姿勢”がもたらした新拠点
1000坪の敷地を有する新拠点は、知多半島の中心部・半田中央インター近くの好立地が強み。名古屋・中部国際空港・三河方面へのアクセスが大幅に改善し、ドライバーの負担軽減にも繋がったそうです。実はこの土地、本来は建物が建てられない市街化調整区域でした。
野口「当時は市役所の担当部署へ何度も足を運びましたよ。とにかく調べて、やっと見つけた“運送事業者向けの特例”。これをもとに陸運局や国土交通省にも確認を取り、最終的に建設が実現しました。竣工時には地域の工務店さんにも“どう建てたの?“と驚かれましたよ」“挑戦を続ける姿勢”そのままに、同社の拠点は生まれました。
地域物流を支える“ラストワンマイル共同配送”
物流の中で最も手間と人件費がかかるラストワンマイル配送。配送の「最後の区間」を担う業務です。同社では、知多半島南部を中心に、複数の大手運輸会社の荷物を集約して効率的に配送する「共同配送」を展開しています。
約20年前、宅配業界全体がより細かなサービスを打ち出し始めた頃。廃業した企業から大手運輸会社の業務を引き継いだことがこの事業の出発点でした。
野口「当時はチャーター業がメインで、不安も大きかった。でも、いま知多半島でこれだけの規模で共同配送を担っているのは当社だけ。今後も“大手の足りない”を支える中継会社として欠かせない存在でありたいですね」

運ぶだけじゃない。倉庫業×運送業で安定経営へ
現在成長中の事業のひとつが、地元ディーラー向け「タイヤ保管サービス」。
野口「ユーザーさんの季節タイヤを保管するサービスです。得意先様から仕事ぶりを評価していただき、今では地域も拡大。武豊町、阿久比町、東海市など広域からのご依頼も。高速インターが近いので取りに来やすいという声もいただいております」
季節で需要が変動する運送業に対し、安定収益となる倉庫業。知多半島で小規模の営業倉庫を運営する企業は少なく、“地域の足りない”に応える姿勢が同社の強みになっています。


IT化×外部コンサルで「働きやすい物流会社」へ
運送業界は“厳しい労働環境”のイメージがありますが、同社では「業務のIT化」と「安全投資」を軸に改善を進めています。QRコードを活用した在庫管理システムの導入や、GPS連動型の勤怠管理でドライバーの休憩・拘束時間を正しく把握できるようになり、業務効率も向上したとのこと。
野口「特に“事故率の改善”には力を入れ、衝突被害軽減ブレーキなど安全装置を備えた新型トラックに入れ替えたことで、事故は大幅に減少しました。働く環境面では、安全教育のために月に一度招く外部コンサルさんが、ドライバーの“相談窓口”のような役割も担ってくれていて。第三者目線で、軽い雑談から社内で相談しづらい悩みまで聞いてくださり、ありがたいですね」
今後の取り組みについても教えていただきました。
野口「共同運送に関しては、運送会社ごとに複数端末を持つ現状で、ドライバーの負担が課題。端末の一本化に挑戦中です。情報開示の壁があり調整が難しいですが、解消されれば業務効率改善に繋がるはずです」
働きやすさを磨き、業界を一歩リード
松岡「入社後の研修は、座学を含め中途採用は3ヶ月、新卒は1年ほど期間を設けています。勤務時間は、ドライバーの場合、朝6時に出勤すると15時が定時。1ヶ月単位の変形労働時間制で、もっと早く帰れる日もあります。繁忙期は残業もありますが、17~18時にはほとんどの従業員が退社しますね」
また、定休日以外の休暇は前月までに申請すれば、ほぼ希望どおり取得が可能。産休・育休制度の整備も進めています。
松岡「2024年には男性ドライバーが1ヶ月半の育休を取得しました。当社の規模としては、比較的早い取り組み事例だと思います」
前職では派遣会社で営業担当だった松岡さん。その経験を活かし“働きやすさ”のアップデートを進めています。
松岡「カラオケ好きの従業員が多いので、カラオケ店の法人会員になったり、知り合いの美容院にも協力いただき“社員割”を設けたり、制服も最近ガラッと変えましたね。働く環境をより良くする工夫は積極的に取り入れています」

“素の姿”を見せるSNS発信で若手採用に成功
SNSを軸にした採用活動も、同社が力を入れている点で、「ドライバーの1日」や「社長が20年ぶりに大型車を運転」など“リアル”な空気感が発信されています。
松岡「更新頻度が高かった時は外部コンサルを入れ、自分でも動画編集を学びましたね。最近は “SNSを見ました”という応募者も増えています。年代によって適した媒体が違うのでSNSは採用の入口としてはとても優秀だと思います」
InstagramやTikTokでは数万回再生の投稿も。人気の理由を尋ねてみました。
松岡「社長の人柄のおかげですね。社長と距離が近すぎてどうなの?と思う時もありますが(笑)意見も言いやすく、若い子も萎縮せずにのびのび働けている雰囲気が伝わるんだと思います」


人を育て物流の未来を開拓する
男女比も良好で、若手従業員も増加。今後は女性ドライバーの採用にも力を入れていきたいとのことです。
野口「仕事が丁寧で責任感がある方が多いので、運送業はもっと女性が活躍できる仕事だと思っています」
また、野口さんは業界の“若手不足”にも向き合います。倉庫業や小型車配送から経験を積み、適性に応じてキャリアを拡大。将来的には、他社へ人材を橋渡しする「物流人材プラットフォーム」の構想も。
野口「会社として“育てる土台”が必要だと思っています。運送に興味を持つ若者を育てて、その子が“もっとこういう仕事がしたい”と思ったら、うちにこだわらず他社を紹介する。それが地域全体の物流の支えになるはずです。“運ぶ、預かる”という物流の基本はブレずに、基盤を固めながら少しずつ形にしたいですね」
応募者へのメッセージ
野口「物流はいつの時代もなくてはならない仕事。若いうちにスキルを身につければ、必ず道は開けます。挑戦心を持って、この地域を支える仲間になってほしいですね」
知多半島の物流を支えながら、次の世代を育てる——。マーメイドデリバリーの挑戦は、まだ始まったばかりです。
