今回お邪魔したのは
・株式会社サンノウインターナショナル(山王学院)
・所在地:愛知県半田市宮路町543番地
・設立:1989年4月
・従業員数:40名(2026年5月時点)
難関中学・高校受験をはじめ、大学受験や公立中高一貫校受検、英語教育にも力を入れている、地域No.1級の進学塾。今回は、愛知県半田市を拠点に、知多半島で学習塾を展開する山王学院を訪れました。出迎えてくれたのは、合田威里代表(以下、合田代表)、合田陽一専務(以下、合田専務)、衛藤専務、英会話クラス担当の西村先生の4名。教育への考え方と、働く魅力を伺いました。
半田の“できない”を変えるところから始まった
山王学院の始まりは1989年。当時の半田地域には、今ほど塾文化が根付いていなかったそうです。
「私立中学を受ける子も少なかったですし、地元の進学校である半田高校に入れれば大正解、という空気がありましたね。親御さんのなかには、愛知県内でも難関校として知られる東海高校なんて、絶対受からない、みたいな思い込みがあった。そんなことはないんですけどね。それを打ち破るのが面白いと思いました」(合田代表)
そこで創立初期には、最難関校合格を目指す特進クラスを設置。通常より授業回数を増やしたことで、複数名が東海高校に合格しました。
生徒の得意や伸びしろを見つけ、「受かる」と思える状態まで導いていく。そこに、山王学院が大切にしてきた指導の姿勢がありました。
「心の持ち方、マインドが一番大事なんです。受かると思って勉強している子は、勉強が楽しい。単語を一つ覚えたら、自分の合格に近づくじゃないですか」(合田代表)
「できるよ」と言われた経験が、今の指導につながる
西村先生は、中高と山王学院で学んでこられた生徒の一人です。
「学生の頃、留学したいと思っていたんですけど、試験には全然届かなくて。それこそ『できない』と思い込んでいました。でも代表に『できるよ』と言ってもらって」
その言葉に背中を押された経験は、今の指導にも生きているようです。
「自分も不安だったからこそ、目の前の生徒の気持ちが分かる。いま英語を教えているんですけど、当時の経験が、ちょっとは役に立っているんじゃないかなと思います」

「できない」を「できるかも」へ変えていくこと。学んだ知識を使う場をつくること。山王学院の英語教育ではその二つを大切にしています。
合田代表は、日本の英語教育を「プールのない水泳教室」と表現します。泳ぎ方を習っても、水に入る機会がなければ本当の楽しさは分からない。英語も同じように、使う場があってこそ、学ぶ楽しさが見えてくるといいます。その考えのもと、山王学院では1993年から海外サマースクールを企画・運営。英語を実際に使う機会を設け、生徒たちの可能性を広げています。


「心の栄養」が、生徒の背中を押す
英語に限らず、山王学院が大切にしているのは、「生徒の心」を変えること。そのために、先生たちは日々どんな声かけをしているのでしょうか。衛藤専務に伺いました。
「生徒の心のコップを上向きにする、という言い方をしますが、まずは何よりも、教師と生徒との信頼関係がすごく大事です。100点を取ったから偉い、ではなくて。あなた自身が元気に塾に来てくれることで、私も頑張れるとか。そんな心の栄養を届けるんです」

ただ褒めたり励ましたりするだけではなく、信頼関係があれば、時には厳しい言葉も届くといいます。
「『先生や家族のためにも頑張ろう』。そういう気持ちになれると勉強が変わっていくんです」(衛藤専務)
合田代表も、「利他の心」の大切さについてこう語ります。
「人はやっぱり、自分のためだけではなかなか頑張れない。『利他の心』がないと、なかなか力が入ってこないですよ」
日々の声かけや関係づくりの中で生まれる「自分のためだけではない頑張り」は、受験期だけでなく、生徒が大学生や社会人になってからも、支えになっていくように思いました。
「受験は団体戦」。教え合うから、さらに伸びていく
「受験って、個人のものだと思われがちですよね。でも、集団の力は、生徒が思っている以上に大きいんです」(衛藤専務)
「受験は団体戦」。これは、生徒に向けた合言葉だそうです。夏期講習などでは学習グループをつくり、教え合うこともあります。
「グループでは、一週間で何時間勉強するという目標をみんなで宣言します。実際に達成した子がいると、あの子がグループのために頑張ってくれたから、自分も頑張ろう、となる。受験を通して、仲間と協力する力や、周りを気遣う力も育つんです」(衛藤専務)
取材の中では、「豊かな合格」という言葉も出てきました。合格という結果だけでなく、仲間を励まし、ともに伸びていく過程も大切にする。生徒が変わっていく姿を近くで見られることも、この仕事のやりがいにつながっているようでした。

▲取材時に見せてもらった「ラーニングピラミッド」。講義を聞くだけでなく、グループ討論や体験、さらに人に教える経験へと進むほど学びが深まる、という考え方

▲「受験(受検)の勝利の方程式五ヵ条」には、あいさつ、前向きな言葉、感謝、高い目標など、受験に向かう姿勢が掲げられている
生徒の味方でいる。未経験から先生として育つ環境
進学塾としての使命について、合田専務に伺いました。
「一番は生徒の成績を上げて、志望校に合格させることです。それだけではなく、人間的成長も促しながら学力が上がっていくことが、大事だと思っています」

では、山王学院で働く先生には、どんな姿勢が求められるのでしょうか。西村先生は、塾の先生ならではの強みをこう話します。
「学校の先生は、内申をつけなければいけない。でも塾の先生は、生徒が『この高校に行きたい』と言ったら、それを全力で応援できます。周りに無理だと言われても、その挑戦を肯定し、最後まで味方でいられることが、塾の先生の強みですね」(西村先生)

教員免許について尋ねると、「持っていない社員も多いです」と衛藤専務。山王学院で重視されているのは、資格の有無ではないようです。子どもが好きで、教えることが好き。生徒と一緒に学び、伴走できる姿勢が大切にされていました。

とはいえ、新人教師が最初からうまく授業を進めるのは難しいもの。合田専務は、最初にぶつかりやすい壁について話してくれました。
「授業はやっぱり緊張すると思います。でもやっていくうちにポイントも分かって、教え方をどうしようかと考えられるようになる。そこに時間がかかるかもしれません」
授業が思うようにいかなければ、生徒アンケートの評価に表れることもあり、最初はショックを受けることも。だからこそ、一人で抱え込ませない仕組みがあります。
「例えば授業のビデオを撮って、一緒に見たりします。最初は、自分が話すことに一生懸命になりがち。そこを修正したり、見本を見せたりします」(衛藤専務)

授業を客観的に見直し、未経験からでも、少しずつ教師としての力をつけていける。そんな職場だと感じました。
プロとして学び続ける。仕事を通して力をつける
ここで挙がったのが、「教師の五者論」。
「教師は、学者であれ、役者であれ、医者であれ、易者であれ、芸者であれ」
先生の仕事には、生徒を見る目や、場の空気をつくる力も求められます。そのうえで、山王学院が特に大切にしているのは、「学者」としての基礎学力です。
「問題を解けなくても、解説本を見ながら説明ができる人もいる。でも、自分で解ける人は、生徒に合った答え方を選択できるんです」(合田代表)

「プロの教師として、生徒の10倍の学力を持つことを大事にしています」(衛藤専務)
教科書は定期的に改訂され、授業前の予習も欠かせません。年に複数回の教務試験や資格取得への挑戦など、授業力を磨く機会もあります。
「一人じゃなかなか、大人も心が折れるんですね。でも、仕事の合間に試験勉強に付き合ってもらったりして。先生同士、励まし合いながら成長できます」(西村先生)
また、授業だけでなく、教室運営や保護者対応などに関われることも、山王学院で働く魅力の一つです。
「規模が大きすぎないからこそ、将来、転職や独立を考える人にとっても、教育の現場を広く知る経験になると思います」(合田専務)
採用や働き方についても、お話を伺いました。
「良い人材を迎えるためには、給与などの条件も大事だと思っています。過去には採用が難しくなった時期もありましたので、今はそこも見直しています」(合田代表)
日曜日は完全休業。社員旅行では、家族分も会社が一部負担するなど、先生たちが無理なく働き続けるための工夫もあるそうです。


最後に、取材全体を象徴しているように感じられたのが「塾は空気を売っている」という言葉です。
「コーヒーは家でも飲めるけど、カフェに行く。それと同じなんです」(合田専務)
ここに来ると頑張りたくなる。仲間の姿を見て、自分も机に向かいたくなる。先生の言葉に、もう一度やってみようと思える。
その空気をつくっているのは、日々生徒と向き合う先生たちです。
「受験は団体戦」という言葉には、生徒だけでなく、先生同士や保護者も含めて、子どもたちの成長を支えていく姿勢が込められていました。
