今回お邪魔する事業者さん
・株式会社東浦ガス商会
・所在地:愛知県知多郡東浦町大字石浜字岐路60-2
・創業:1969(昭和44)年
・従業員数:7名
東浦町を中心に知多半島・三河でガスの販売・施工と水道工事を行う「㈱東浦ガス商会」。4代目社長の古川さんに会社と仕事についてお話を伺いました。
東邦ガスから依頼を受け設立した東浦ガス商会
東浦ガス商会の創業は昭和44年。設立は東浦町に都市ガスを引くために、東邦ガスが地元の建設業者にガス管の埋設工事の依頼したことがきっかけでした。しかし個人宅への配管工事までは携われず、それを聞いた町内の有権者が立ち上げたのがガス専門会社である「㈱東浦ガス商会」でした。

その後会社は事業を拡大し、中部エリアでトップシェアの東邦ガスネットワークの指定工事店「東邦ガスくらしショップ」として、公共事業も請け負う東浦町上下水道指定工事店へと成長しました。
「実は創業者一族と私は無関係なんですよね。2代目以降に事業を継ぐ人がいなくて、たまたま当時施工の責任者をしていた父が雇われ社長という形で3代目に就任したんです。」と古川社長。
父の引退と突然の社長就任

「その当時私は自動車保険会社の調査人をしていて、昼夜問わず顧客対応に追われていました。肉体的にも精神的にもハードだったので結婚を機に転職を試みて、次が見つかるまでの繋ぎで父の会社の手伝いを始めたんです。ちょうどガス会社が続々とリフォーム事業に乗り出した頃で、ガス・水道関連の設置や修理作業から空間の提案をする機会が増えて、それが楽しくて気づいたらそのまま居座っていました(笑)」
現場経験を積みさまざまな資格を取得して、父と同じ施工部門の責任者となった古川さん。転機は突然訪れます。
「父親が社長といってもオーナーは別にいますし、次期社長候補もいたのでサラリーマン感覚だったんです。だけど父の引退のタイミングで社長候補も退職し、社長のポストがブランクになってしまって…。」
そこで白羽の矢が立ったとのこと。さらに父に続く“雇われ社長”を引き継いでほどなくすると更なる選択が迫られます。
「今度はオーナーから会社を手放したいと連絡がきたんですね。つまり全てを譲渡(古川さんが株式を含め会社ごと買い取る)したいって話です。雇われから本物の社長になったんですよ。私の一番の転機、嘘みたいな本当の話です。」

会社を買い取る決断をした理由は何だったのでしょうか。
「私自身この仕事にやりがいがあって会社を続けたいと思ったし、土地、社屋、資材はもちろん、東浦ガス商会にはこれまでの実績と築いてきた信頼もありますから。これらをもう一度ゼロから始めようと思ったら相当ですよ。それだけ歴史がある会社なんです。」
そもそも「東邦ガスくらしショップ」という看板を掲げられるのもまた、東邦ガスとの契約があり毎年相当な実績が必要なんだそう。
「会社が自分名義になっただけで、これまで通り仕事はきっちりと、でも社長として自分なりに問題点を洗い出して改善を加えていきました。おかげで就任して11年、コロナ禍を除いては順調に業績を出せています。」
現在はメインとなるガス機器の販売・設置、水回りの工事のほか、トイレやキッチンのリフォーム、外壁工事やバリアフリー化などなど…とにかく幅広く、言うなれば“家に関わる困りごと”はなんでも引き受ける「なんでも屋さん」になっているとのこと。
はじまりはお客様からの入電。ちょっと意外なガス会社の営業
「ガス以外にもいろいろな事業をしていますが、私たちから勧誘や個人宅への飛込み営業、テレアポ(電話勧誘)をすることは一切ありません。」と古川社長。
ガス会社の営業は世間一般の営業とは少し異なるよう。
「初手は受け身というイメージでしょうか。メインはトイレの詰まりやお湯が出なくなったなど、トラブルに直面したお客様の対応です。簡単な修理や交換であれば営業が直行しますし、専門性のある案件であれば施工や修理・メンテナンスに長けた技術者が向かいます。相手は既存のお客様もいれば、初めて電話をくださる新規の方もいます。」

こうしたトラブルの依頼を迅速に解決していくことが信頼関係を築く第一歩。そして新規営業をしない代わりに、一度お取引したお客様へのアフターケアに注力しているとのこと。
「時間がある時は、修理や販売後の状況確認も兼ねて訪問したりしています。基本的に対応エリアが東浦町内とその近隣なので、社名を言えば“あぁ!あそこね”となるのがほとんどです。私が5年ぶりに顔を出したお客様も、“久しぶりだね~”と声をかけてくれましたし、担当が変わっても変わらず良いお付き合いをして下さるのって地元密着企業ならではかなと思います。」



水回りやガス機器トラブルが突然起こり、ネット検索や看板を見たなどのきっかけで初めてくる電話もあるそう。
「そうした新規のお客様も困っているから電話をくださるわけで、訪問すると一番に言われるのが“来てくれてありがとう”なんです。訪問しただけで感謝されるなんて、そんな営業は他にないと思います。」
どんなに忙しくてもこうしたお客様の感謝の言葉が心の支えになっていると古川さん。
「ほかにも保安機器の定期訪問をメインで動く営業もあります。住宅ガスの警報機と消火器は使用期限が5年と決まっているので、交換のために訪宅が必要なんですね。特に最近は意識が高くなってきていて、ガス警報器や小型消火器を導入する家庭も増えているのでスケジュールがどんどん埋まっていきます。」

機器の交換は資格が不要かつ作業内容も簡単なので、女性スタッフが担当していたこともあるとのこと。
「お客様からの入電で修理・メンテナンスに動く営業は突発的なのに対して、保安機器の定期訪問は事前に組んだスケジュールで動くため、営業スタイルの主軸は決まってきてしまいます。ただ私たちは“よりよい暮らしの提案”をビジョンとして掲げているので、お客様から悩みや相談にはオールマイティーに対応できるようにしています。」
ガス機器販売と水道工事が“何でも受ける屋さん”になる理由

そもそもなぜガスや水道工事だけじゃなく内装のリフォームや外壁・屋根の工事まで提案することになるのでしょうか。
「例えば水漏れトラブルで駆けつけた際によくあるのが周辺の床にたわみが生じてしまったケース。これは劣化した配管から漏れた水が少しずつ床下に溜まり、高湿度環境が続いた事で床板が腐朽してしまったことが原因です。こうなると床下工事の必要性も考えなくてはいけません。」



「当初のご依頼は水漏れトラブルの解決だったとしても、お客様に不利益が生じる可能性がある場合には、現状を一緒に確認しながらきちんとご説明します。結果として大がかりなリフォームや工事になるだけで、修理から一貫していることなんです。」
このように現場で状況が変わることはよくあるそうで、過去には住人からドアの不調を聞き床下を確認してみると、基礎部分に大量のシロアリを発見したこともあったそう。
「あの時は了承をとって駆除と対策を施し、ボロボロになった基礎は大工さんを呼んで補強しました。お客様もシロアリの存在にとても驚いていたし、そのままにしていたらと思うとゾッとします。ちょっとした違和感ですが、見逃がさなくて本当に良かったです。」


こうしたいろんな事案が発生してもすぐに対処できるのは、東浦ガス商会が創業から築いてきた地元企業との横の繋がりがあるからこそ。
「地元の職人さんや近隣業者とは日頃から連携していて、電話をすれば見積りから現場確認、着工まですぐに話をつけることができます。例えばここに棚を取り付けてほしいという日曜大工のような依頼も馴染みのプロ大工がさっと出向いて取り付けてくれますし、大抵のご依頼は何とかできますよ。」

大手であれば時間がかかる上、追加でこれもやってほしいというわけにもいかない。それができるのは臨機応変に判断できる地元企業の強いところ。困っている人がいればすぐに駆けつけ直してくれる頼れる存在。ガス会社とは、住まいを通して地域の安心と安全を守る、ヒーローのような会社でした。
