事業者レポート

鉄の道は、まっすぐ、そしてやわらかく──鉄とトモダチになる会社

今回お邪魔したのは、
・大栄技研工業株式会社
・所在地:愛知県半田市州の崎町2-108
・創立:1955年9月
・従業員数:国内79名(2025年12月時点)

技術はピカイチ。一枚の板から、可能性はどこまでも

鈑金・溶接一筋70年近く。「鉄をどう形にするか」に挑み続ける大栄技研工業は、世界の産業を支える部品を手がけてきた実力派企業であり、業界では「技術のダイエイ」とも呼ばれるほど!

今回お話を伺ったのは、取締役の山守さんと、総務部・人事の中塚さん。実際の製造現場もじっくり案内していただきました。

左から山守さん(2016年入社)、中塚さん(2009年入社)

フォークリフト部品から焼肉屋まで、意外と身近に

まずは、いま製造している主な製品について山守さんにお訊きしました。
「メインは、フォークリフトの部品、油圧機器用のオイルストレーナー、ダンパーの3つです。フォークリフトの部品は、ピラーを中心に、ペダルやヘッドガードもつくっています」

ピラーとは、車体の後ろ側で運転席の屋根を支える重要な部分。
同社は、安全性とデザイン性の両立で、高い評価を得ているのだそう。

同社のピラーを搭載した車種のミニカー。独自設計のピラーで、上部がやや細いテーパー形状が特徴。

ダンパーとは、建物の天井や壁内部にある空調ダクトに取り付けられ、風量を調整・制御する装置。じつは、意外な場所でも活躍していました。

「焼肉屋さんのロースターなどにも使われているんですよ。内部には、一定温度以上で溶ける部材が組み込まれていて、火災などが生じると自動的に閉まる仕組みです。火の延焼を防ぐ“防火ダンパー”ですね」と山守さん。

鉄の仕事が、思いのほか私たちの日常のあちこちに入り込んでいることを実感しました。

空調業界で活躍する同社のダンパー

始まりはパチンコ台から。世界へ広がる歩み

会社の歴史についてお訊きすると、始まりは商社だったそうです。
「もともと“大栄商事”という名で、大工さん向けの建材を扱っていたんです」と山守さん。
やがて名古屋市にあった鈑金工場を引き継ぎ、1955年に「大栄鈑金工業株式会社」へ。当初の主力製品は、パチンコ台の金属枠だったそうです。
そこから鈑金・溶接技術を着実に磨き、現在の中核事業である、フォークリフト部品製造へと発展していきました。

一方、空調用ダンパー事業のきっかけは、先代社長の想いでした。
「エンジニア出身でしたから、下請けではなく、自分たちで一から設計してものづくりをしたい、という想いがあったんだと思います」と山守さん。
事業の幅が広がっても、「鉄をどう形にするか」という技術の芯は一貫。やがて全国的なダクト商社との関係も築くことができたといいます。

1995年には、中国・丹陽に空調用丸ダンパーの製造工場、南京に空調用防災ダンパーの開閉器製造、フォークリフト鈑金部品製造工場など、それぞれ現地法人を設立。
2014年には、アメリカ・インディアナ州にも工場を構え、日本の大手産業車両メーカーの現地工場向けに、フォークリフトの部品生産を担っています。

「鉄の加工は、自在に形を変える面白さと組み立てていく楽しさがありますね」と笑顔の山守さん

いざ、鉄と向き合う現場へ

ここからは中塚さんのガイドで、実際の製造現場へ潜入!
事務所を出て、廊下の反対側のトビラを開けると……そこはプレス、レーザー、曲げ、溶接、仕上げ。各工程が集まり、それぞれの機械が独特のリズムを刻む大空間。
油と鉄の匂い、床に刻まれた痕跡など、長年積み重ねられてきた仕事の重みが感じられます。

こちらはダンパーを扱うエリア。製造工程では、まっすぐの板をロール機械で円筒形にし、必要な部品を溶接していくそうです。完成品は大小さまざま。これらが最終的に建物の一部となって機能します。

続いてフォークリフトの部品製造を手がけるラインでは、ピラー曲げ加工を見学。

「これが、うちのコア技術です」と紹介してくれたのは、巨大な機械。「マンドレル」と呼ばれる部品を中空構造のピラーの中に入れ、シワや亀裂が入らないよう時間をかけてゆっくり曲げていきます。急がず、無理をさせず、まさに「鉄とトモダチ」な仕事といえます。

マンドレルが骨組みとして中に入り、ピラーを内側から加工

溶接の工程では、黄色いカーテンの向こうで強い光が瞬いています。なんと、ロボットが部品を次々と溶接! でも最後は人の手で仕上げていくのだそうです。

「精密な部分はやはり、人ですね。経験が必要なので、いわば花形の仕事です」と中塚さん。
習得には長い時間と積み重ねが欠かせない技術で、社内では育成プログラムも整えられているそうです。

手溶接を担当できる技術者は工場全体でもごくわずか

重い部材を軽々と扱う男性社員たちが働く一方、小さな部品などの一部のプレス加工や、スポット溶接の工程では女性の姿も見られました。2025年12月現在、製造現場では女性が6名働いているそうです。

こちらのプレス機を操作しているのは女性。鉄が次々に形を変えていきます

また、若手社員と熟練社員が一緒に作業する姿も見られました。

「定年を迎えた後も、嘱託社員として現場に関わっていただいています」と中塚さん。
そうした様子からも、技術や現場感覚が次の世代へと少しずつ引き継がれていることが伝わってきました。

まっすぐなものづくり、大栄技研の仕事

実際の製造現場では、鉄と向き合い、理想の形をつくり出していく様子を間近で見ることができました。
会社のモットーである「鉄とトモダチになる」。この言葉は、フォークリフト部品開発の取材を受けた際に生まれ、そのまま定着したものだそうです。

溶接時の微妙な変形にも配慮した「高度な溶接技術」、三次元レーザー加工機や溶接ロボットといった「現代的な設備」、さらに「もっと良くしたい」という声が改善につながるという現場の風土。こうしたものづくりの積み重ねが、国内大手産業車両メーカーとの長年の取引を支えてきたのだと感じます。

鉄と向き合ってきた確かな歩みを礎に、進化を止めないその姿は、まさに“鉄とトモダチ”という言葉を体現しているようでした。

“職人気質だけではない”会社の空気

今回案内してくれた中塚さんは、製造現場にも詳しく、その知識の深さが印象的でした。人事として会社説明会を担当する中で、現場のことも一から学んできたそうです。

社内の雰囲気についても、こんな話を聞かせてくれました。
「社長との距離も近いですよ。直接話す機会も多くて。社員の誕生日には、社長がお気に入りのバウムクーヘンをプレゼントして、“最近どう?”って面談するんですよ」

そう笑顔で語る中塚さん。実は、趣味のイラストが仕事に生きた経験もあったとか。
「まさか仕事で絵を描くことになるとは思いませんでした。嬉しかったですね」

中塚さんは社内報のイラストや、電動アシスト自転車事業の説明書作成を任されたことも

社員の成長や活躍の場をつくることを、社長自身が楽しんでいる。そんな会社の姿勢が伝わってきました。後継者として現場に立つ山守さんも、
「現社長の“人好き”な人柄が、会社の色ですね。自分はその中で、どんな色を出していけるかが今後のテーマです」と静かに意気込みを語ってくれました。

現場の緊張感とは対照的に、社員の皆さんの印象はどこかやわらかく、親しみやすさがあります。
「社員同士の仲もいいですよ。飲み会などの交流も活発なので、ワイワイするのが嫌いじゃない人なら、すぐ馴染んでくれると思います」と中塚さん。

“職人気質一辺倒”ではない、あたたかな空気が流れているようでした。

安定と、ちょっとした挑戦のあいだで

最後に、「どんな人に向いている会社だと思いますか?」とお訊きしました。
「ものづくりが好きな人ですね。給料面も含めて、安定感を好む人にも合うと思います」と山守さん。
フォークリフト事業は、一般的な自動車と比べるとモデルチェンジが少なく、生産量も安定。夜勤もなく、生活リズムが整いやすい環境なのだそうです。
「新入社員には先輩社員が一から指導する体制が整っていますし、安心して成長できますよ」と、中塚さんも話します。

その一方で、挑戦も忘れないのが同社の特徴。
過去には、リーマンショックに代表される事業環境の変化をきっかけに、新たな試みとして電動アシスト自転車「epovelo((エポ・ヴェロ)」を企画し、製造から販売まで手がけました。

当時制作していたフレームを金色に塗装し、記念に飾っているそう

発売溶接・フレーム形成技術を活かした設計を武器に、軽さと丈夫さ、デザイン性を両立した製品だったそうです。

イギリスの小径自転車(ミニベロ)ブランド・モールトン(Moulton)をイメージしたのだとか

また、部門の垣根を超えて挑んだ卓上ストーブのクラウドファンディングプロジェクトは、公式サイトだけでなく地域イベントでも注目を集めました。

精緻な金属加工が映えるうつくしいデザイン。機能面の改善を踏まえ、第2弾の開発も検討中とのこと

「本業で安定した取引があるからこそ、こういう“遊びのような挑戦”もできるんです」と山守さん。
鈑金・溶接の「コア技術」、フォークリフト部品とダンパーの「安定した事業」、そしてときどき顔を出す、新しい試みへの「好奇心」。
この3つが無理なく共存し、鉄の道をまっすぐに進みながら、柔軟に進化を重ねていく。そんな姿勢こそが、大栄技研工業のいちばんの強みなのかもしれません。

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チタジョブライター
後藤春香
愛知県名古屋市出身、常滑市在住のライター。独学でWebライターとして活動を始め、現在は書籍編集アシスタントや動画編集にも少しずつ携わっています。人やモノ、地域で生まれる仕事やチャレンジの魅力を、丁寧にお伝えできるよう日々心がけています。プライベートでは、愛犬と過ごす時間が何よりの癒しです。
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