今回お邪魔したのは
・永和化成工業株式会社 衣浦工場 研究開発部
・所在地:愛知県半田市日東町1-8
本社:京都市中京区烏丸通三条下る饅頭屋町595-3 大同生命京都ビル3階
・設立:1955年11月
・従業員数:140名(2026年3月時点)
永和化成工業株式会社は、国内唯一の化学発泡剤(以下、発泡剤)専業メーカーとして、製品を世界32カ国に展開しています。愛知県半田市の衣浦工場は、その製造と研究開発を担う主要拠点です。
製品を軽く、快適にする「発泡剤」。そう聞いても、イメージが湧かない方が多いかもしれません。けれど実は、毎日乗る車や住宅用建材、食品容器、ランニングシューズのソールまで、私たちの暮らしに身近な製品を支える欠かせない存在です。


衣浦工場内の研究開発部は、8名の少数精鋭チームで発泡剤の研究・開発に取り組んでいます(2026年3月時点)。今回は内山さん、関さん、大前さんの3名にお話を聞きました。

私たちの暮らしを陰で支える、「発泡剤」とは?
「発泡剤って何ですか?」
座談会の冒頭、思い切って基本的な質問をぶつけてみました。
「プラスチックやゴムを膨らませて発泡体にするための、粉状の材料が『発泡剤』です。ガスになって最終的に形が残らないので、イメージしにくいんですよね」と話すのは、内山さん。発泡体とは、中にたくさんの気泡が入ったプラスチックやゴムなどのスポンジ状の素材のこと。

「発泡スチロールを思い浮かべる方が多いですが、日用雑貨から自動車の内装材、家電、スポーツ、医療分野と意外と幅広く使われているんですよ」(内山)
形は残らなくても製品の性能を左右する発泡剤。「発泡体を作っている会社だと思われることも多いです」と朗らかに話してくれましたが、その存在を知るだけで、この仕事が担っている価値の大きさが伝わってきました。
研究グループと開発グループ、それぞれの役割
研究開発部は、研究グループと開発グループで構成されています。
「私は研究グループで、工場の粉末製品の生産管理を担当しています。コスト低減の検討や、新製品の開発にも携わっています」(内山)
開発グループの関さん、大前さんはお客様により近いところで仕事をしています。
「私は発泡剤のマスターバッチや配合設計のほか、お客様への訪問やWEB面談による技術サービスを担当しています」(関)

「マスターバッチ」とは、発泡剤を樹脂やゴムに練り込んで扱いやすくした製品のこと。
「発泡剤はパウダー状のままだと粉立ちしやすいので、作業環境の改善にもつながるんです」(大前)

大前さんはマスターバッチの設計開発と、技術サービスを担当。
お客様の現場に赴いて、使い方を説明したり、実際の作業に立ち会ったりすることもあるそうです。関西より西のエリアの顧客を担当し、時には泊まりの出張も。
「取引先の成形機についても知っておかないといけないので、必要な知識の幅は想像以上に広いですね」(大前)

白衣だけじゃない、研究開発職のリアル
研究開発と聞くと、白衣姿で静かな研究室にこもるイメージがありますが、実際は?
「デスクワークの日もありますが、作業着を着て、条件を変えて実験していることが多いですね」(内山)
「入社前、研究開発職はもっとスマートなイメージがありましたが、実際は重いものを持つこともあるし、夏場は機械や材料が発する熱による暑さでエアコンが追いつかないこともありますよ」(関)

実験だけではなく、他部署や社外との接点が多いのも、この仕事の特徴です。関さんは1~2ヶ月に一度、東京へ出張し、営業担当と自動車や建材メーカーの担当者に技術サービスを行っています。内山さんも、現場や品質管理、購買など他部署と日常的に連携しながら仕事を進めているとか。
「ふだんから現場の方と交流があると、生産中のちょっとした異変を教えてくれることもあって。そういう環境はいいなと思っています」(内山)
聞いて想像している研究職よりも、ずっと現場に近い仕事であることがうかがえました。
“ポンと膨らむ”その瞬間に、面白さがある
今回の取材では、実験室も見学させてもらいました。
開発グループが使う加工実験室には多彩な装置が並んでおり、お客様ごとに異なる発泡の成形方法を再現できる環境が整っています。
「いろいろな発泡の成形方法を試しながら、検討した配合の仕上がりも確認しています」(大前)


「なかなか思うように材料が膨らまないときもあって。でも、ある条件でポンと膨らむ瞬間があるんです。その瞬間はやっぱり面白いですね」(大前)
発泡倍率が大きいものでは10~40倍に膨らむこともあるそうで、達成感は大きいといいます。
見学の最後に大前さんは「自分が関わった製品がお客様によい評価をされたときは、やりがいを感じます」と笑顔で教えてくれました。
続いて研究グループの合成実験室へ。
「新製品の検討や、不具合発生時の原因究明のための分析、既存製品を改良するための実験を行うことが多いです。デスクワークの日もあるので、毎日同じ仕事が続くことはないですね」(内山)

最近は、導入したばかりのマイクロスコープが活躍中だとか。
「膨らませた材料の気泡の数や大きさの違いを記録したり、それらの物性を報告したりする仕事もあります」(内山)


やりがいを感じる瞬間について聞くと、「やっぱり研究の成果が実際に見えたときですね」と内山さん。
検討した配合を実際に発泡体にして確かめる「開発グループ」と、発泡剤の成分や構造を見極めながら、新しい材料の可能性を探る「研究グループ」。役割は異なっても共通するのは、試行錯誤を重ねながらよりよい製品を形にしていく面白さでした。
ニッチだから難しい、でもそのぶん面白い
「発泡剤はニッチな分野なので、文献を探しても答えが出てこないことがあります。関連する技術をたどって調べたり、別の分野で使えている技術を、自社製品に応用できないか考えたりしています」(内山)
「お客様先で不具合が起きたとき、どう改善するかを考えて、それを説明するのはやはり神経を使いますね」(関)
「お客様へのレクチャーも緊張します。温度設定をどうしたら改善するか、という意識を持って臨みますが、想定どおりに進められるかプレッシャーはあります。そんなときは過去の事例を調べたり、上司や先輩に相談したりして。もしうまくいかなかった場合、また別の方法を試す。それの繰り返しです」(大前)
印象に残っている出来事についても聞いてみました。
「入社1年目の6月、自分の実験報告を社内の定期報告会ではじめて発表したんです。とても緊張したことを覚えています」(大前)
「入社当初、実験で失敗したと思い放置していたところ、思わぬ物質ができていたことがありました。それを深掘りしていったら、思いがけず良い性能を有していることがわかり、結果的に特許出願までつながって。今でも印象に残っています」(内山)
「自分が配合した発泡剤について、京都大学で発表させてもらえたことです。入社2年目とまだ経験が浅い中でも重要な仕事を任せてもらえたことに、大きなやりがいを感じましたね」(関)
聞きやすい、働きやすい。少数ならではのよさ
未経験から働くのは難しいのでは?という問いに対しては、3人はこう答えてくれました。
「今のほとんどの研究開発部員は、資格も発泡剤の知識もゼロからスタートですよ」(内山)
「1年目は先輩について実験したり出張に同行したり。2年目から少しずつ1人で仕事を任されるようになります」(大前)
「覚えることは多いですが、上司に相談しながら地道に実績を積んでいく感じですね」(関)
「学生時代に実験や研究でPDCAを回してきた経験がある人なら、十分やっていけると思いますよ」と内山さん。実際に化学系だけでなく薬学・農学・機械など多様な学科出身者が在籍。報連相を大切にしながら取り組めば、専攻を問わず活躍できるといいます。

職場の雰囲気はどうなのでしょうか。
「中途入社も多いので、年齢差や経歴の違いも気にならず居心地はいいですね」(大前)
「聞きたいことが聞きやすい環境だと思っています」(関)
「30代前後が多く、コミュニケーションは取りやすいですよ」(内山)
新人でも自分でスケジュールを組める自由度の高さも、この職場ならでは。残業も比較的少なく、働きやすさにつながっているようです。
最後に、応募を考える方へメッセージをいただきました。
「『知識がないけど大丈夫かな』と不安に感じる方もいると思うんですが、みんな結構一緒なんです。ちょっとでも気になったらぜひ応募してほしいですね」(大前)
「知識があるかどうかより、『なぜなんだろう』と深掘りして考えられることが大切かなと思います」(内山)
「いろんな人と話す仕事でもあるので、コミュニケーションに自信がある方は大歓迎です」(関)
わからないから聞く。自分で確かめる。そうした積み重ねの先に、この仕事ならではの面白さが見えてくる。知識ゼロからでも、好奇心さえあれば飛び込める職場――。永和化成工業株式会社の研究開発部は、試行錯誤の先にあるやりがいを、じっくりと実感できる場所でした。

