今回お邪魔したのは
・岩部建設株式会社
・所在地:愛知県知多郡武豊町字西門74
・創業:1926年4月
・社員数:50名
建設現場というオーケストラを導く「指揮者」
普段の暮らしの中で目にする、いつもの建物や見慣れた道。その「当たり前」が形になるまでを導き、見届ける人たちがいます。今回訪れたのは、愛知県武豊町に本社を構える岩部建設株式会社。「ご安全に!」を合言葉に、大正15年創業以来、免震・耐震工法を含む建築をはじめマンション、店舗、公共施設、道路・水道・橋といった社会インフラ整備まで手がける建設会社です。

▲施工実績の一部

「施工管理者は簡単に言うと“4つの管理”をする人ですね」
これは、現場でベテラン現場監督さんに教えていただいた、「施工管理」の核となる考え方。4つとは、現場における「工程管理、品質管理、原価管理、安全管理」のことです。
工事の進み具合(工程)、仕上がりの品質、コスト、安全面。施工管理はこれらを同時に見ながら、現場全体を調整していきます。
同社では建築現場をオーケストラに例えています。多くの専門職が集まり、それぞれが自分のパートを担う。施工管理はその中心に立ち、優先順位をつけ、連携をとりながら工事を完成へと導く、いわば「指揮者」。
今回は、建築部で施工管理者として働く加藤和也さん(令和元年4月入社)にお話を伺いながら、実際の施工現場を見学させていただきました。

「現場監督」と同じ意味で使われることも多い施工管理者ですが、現場監督はあくまで“呼び名”。工事の内容や条件によっては、主任技術者や監理技術者の配置が必要になり、その要件を満たす資格の一つが“1級施工管理技士”です(建設業法26条)。
「ほとんどの現場においては、有資格者がいないとそもそも着工できません」
加藤さんの言葉からは、現場を担う責任の大きさが伝わってきました。(以降、本文では施工管理者=現場監督として表記しています)
原点は父の背中。「別の形」で同じ現場へ
大同大学の建築学部を卒業した加藤さんは、図面、構造計算など、建築の基礎を一通り学んできました。それでも現場に出ると、机上の知識だけでは全く足りないと言います。「現場で覚えることのほうが圧倒的に多いですね」
職人さんの動き、作業の順番、危険箇所、法令や基準の変更。さらには天候や資材の納期など、想定外の事態への対応も。その日の条件に合わせて「最適解」を選ぶ力が求められるのだとか。

入社の経緯について伺うと、加藤さんならではの背景がありました。
加藤さんのお父さんは型枠大工。建物の基礎や外壁部分を担い、コンクリートを流し込むための“型”をつくる職人さんです。
「本当は、大工になることが一番の夢だったんですよ」
一方で家族の思いもあり、大学へ進学した加藤さん。そのなかで見つけたのが、「父たちと同じ現場に、別の形で関われる仕事」。
「この会社との出会いも、父が勧めてくれたことがきっかけです」
加藤さんにとっては、同社はごく自然にたどり着いた就職先でした。
1年目は「見て覚える」。今は「任せて整える」へ
入社してすぐの様子については、「まずは職人さんのもとで、作業の流れを見て覚えるのがメインでしたね」と加藤さん。
現在は、施工図のチェックや職人さんの手配、工程づくりなど管理側の仕事が増えてきています。
「できることがどんどん増えていくので、ちゃんとステップアップできてるなって実感があります」

「うちの会社は、監督ごとに信頼している職人がいて同じメンバーで現場に入ることが多いですね。やり方を理解し合っているので、自然とスムーズに進みます」
面白い点は、現場には「監督ごとに色」があること。こだわるポイントや段取りの組み方もまったく違うといいます。加藤さんは、複数の上司のもとで学ぶなかで「現場は人が作るもの」だと実感。それぞれのいい部分を吸収していけたら、と話してくれました。

施工管理の1日について伺うと、現場によって流れも変わるようです。通常は朝8時までに事務所へ出勤。朝礼後、各自作業や事務仕事へ。17~18時ごろに退勤します。ですが、現場によっては、自宅から直行直帰のスタイルもあるとか。
「事務所より現場にいる時間の方がやはり長いですね。作業開始時刻はだいたい8時からですが、事前に近隣と打ち合わせして、音が響きやすい環境などでは1時間ほど遅らせることもあります。作業終了は17~18時ごろですね」
周辺の暮らしと折り合いをつけながら工程を組んでいくことも、施工管理の大切な仕事です。
「立地条件、建物、工程の組み方も、同じものが一つもないこと」。これもこの仕事の特徴であり、難しさだと言います。
加藤さんが現在担当している現場(2026年2月時点)も、基礎工事前に掘り進めた地盤がすべて“岩”という、特殊な条件だったとか。通常3か月ほどで終わる工程に、半年以上かかっているそうです。
「重機作業で、ずっと同じ景色を見ていますよ!」その一言からも、現場の難しさが伝わってきました。

一人前の基準については、「実際に自分で現場を持ってみないと、というのはありますね」と加藤さん。
「知識を深掘りするよりも、大切なのは『どう任せるか、どう見守るか』。職人さんの仕事が気持ちよく進むように整え、問題が起きる前に気づく。これらができて、ようやく一人前の『現場監督』だと思います」
同社の特徴は、途中で別現場に入ることもあるものの、基本的には担当者が「同じ現場に最初から最後まで関わる」こと。
「完成後の内覧会で、お客様に直接説明する時もありますよ」
つくる過程だけでなく、引き渡しの瞬間まで見届ける。だからこそ、経験を次に活かしやすく、やりがいも感じやすい。加藤さんの言葉からは、そんな様子が伝わってきました。


今回加藤さんのご案内で見学させていただいたのは、本社近くで作業中の現場です。
「給食センターを新設中です。赤い鉄の柱が鉄骨です。下に組んだ型枠がありますよね。そこにコンクリートの素材を流し込み、固まったものが躯体になります。一層ずつ積み上げることで、建物の形が立ち上がっていくんです」と加藤さん。

日々の仕事では、「当たり前を、当たり前に守ること」に目を光らせます。
材料が規定通り施工できているか、配筋が図面通りか。完成後に見えなくなる部分は写真で記録し、資料として残す。こうした地道な確認が品質管理の要です。

「安全面では、ヘルメット着用や資材の整理整頓にも気を配っています。物が散乱していれば、転倒や怪我につながる可能性もありますからね」

掃き掃除やカラーコーンの設置、風で飛びやすい物の管理。「危ない芽を先に摘む」意識で現場をチェック。特に線路や住宅街に隣接する現場では、飛散物や騒音にも細心の注意を払っているそうです。

「大変な仕事ばっかりですよ」
苦労する点について伺うと、そう前置きして挙がったのは人間関係。職人さん、クライアント、案件によっては行政・自治体の担当者など、多くの人が関わる現場。立場が違えば、意見の食い違いが起こることもあります。人と人との間に立って落としどころをつくるのも、施工管理者の役目。外国人技能実習生とのやり取りでは、身振り手振りで伝える場面もあると言います。

若い職人さんへの接し方も時代とともに変わっているそうです。「厳しくしすぎると辞めちゃうこともあるので、だいぶ優しくしていますね」ベテラン現場監督の天野さん(写真左)からは、そんな声も聞くことができました。
人と人をつなぎ、街の風景をつくる
それでも、この仕事を選んでよかったと思う瞬間は多い、と加藤さん。「足場のシートが外れ、建物全体が見えた瞬間は、やっぱり達成感がありますね」
これまで図面と工程表で追いかけてきたものが、街の風景として立ち上がる瞬間。その感覚は、この仕事ならでは。
「地元で自分が関わった現場を見かけると、友人に『僕が監督したんだよ!』って言えるのは嬉しいですよ」そう笑顔で答えてくれました。
頑張った証が長く町に残る──そのやりがいが次の現場へ向かう力になっているそうです。
「あと、僕は職人さんになりたかった人間なので、職人さんたちと話すのが好きなんです。現場のエピソードが聞けたり、父と付き合いのあった人たちから『お父さんこうだったよ』と教えてもらえたりするのは、役得だと思っています」
ただ管理する仕事ではなく、輪の中に入り、現場に集う人たちの経験や、誇りに触れながら仕事をつないでいく。加藤さんの言葉からは、そんな側面も感じられました。

最後に、この仕事に向いている人について伺いました。
「やはりモノづくりが好きで、現場が好きな人ですね。転勤がないから地元で働きたい人にもいいと思います」
加藤さんの今後の目標は、「父と同じ現場に入ること」。
そして「今後自分の現場を持っていく中で、やれないことを少なくしていくこと」。
「工程の後半で慌てないように短縮できる部分はないか。経験を積めば、そういったことにも気づけるようになれますから」
目の前の課題を一つずつ減らし、段取りの精度を上げていく。人をつなぎ、声をかけ、確認を重ねる。その積み重ねが、街の風景になる。ここで出会ったのは、そんな施工管理の仕事でした。
